サファイアの産地インド亜大陸の南東に浮かぶ宝石の島「スリランカ」
サファイアの産地インド亜大陸の南東に浮かぶ宝石の島「スリランカ」
サファイアを求めてスリランカへ
南アジアのインド亜大陸の南東に浮かぶ宝石の島「スリランカ」様々な宝石の産地としても知られるこの島で最も注目を集める宝石は「サファイヤ」そんなスリランカ産サファイヤの魅力に迫ります。
スリランカまでは羽田や成田からも直行便が出ていますが、便数が少ないのでそこまでの交流人口がないかもしれません。しかも周辺のタイやインドと比べてもややアピール下手なのか人気的にも周辺アジアの中でもそれ程でもないですね、、しかも宝石の集散地としてはタイのバンコクの方が大きいので、ルビーやサファイヤなど宝石種を絞らずに狙いに行く場合には、産出国であるスリランカやミャンマー、ベトナム、ラオスに行くよりも集散地のバンコクに買い付けに行くという場合も多いのですが、今回は本当に特品のスリランカ産出のブルー・サファイヤが目標なので集散地ではなく原産地へ向かいます!
スリランカはサファイヤのほかにもクリソベリル(アレキサンドライトやキャッツアイ)やベリル、半貴石ではトルマリンや最近人気のスフェーンやターフェアイト、 希少宝石として注目を集めるグランディディエライトなど様々な宝石の産地でもあります。
日程の関係で成田空港からの直行便で行きます。スリランカと日本の時差は3時間半、日本の方が進んでいます。成田を11:30に出発して現地時間の19:30に到着します。約11時間のフライトです。直行便はスリランカ航空で行けます。公式Webからチケット手配が可能です。格安LCCとまでは行きませんがリーズナブルで選びやすい設計のサイトで手配は簡単でした。
スリランカの民族衣装“サリー”姿のキャビンアテンダントがお出迎えしてくれます。どこか懐かしいけど、特有のラベンダー香水の強烈な匂いが漂う機内へ乗り込みます。いつも思いますがちょっと強すぎるのではないっすかね?それでも30分もすると慣れてくるのが恐ろしいところ・・・・
機内食はスリランカ料理のチキンカレーをチョイス。CAさんに「辛いよ!」と忠告されましたが、辛さもそこ迄でも無くなかなかおいしいカレーでした。機内食はそこまで期待していなかったのですが、これはおすすめです!
ちなみに赤道直下はスパイスか塩分で殺菌する料理が多いので日本から行く場合は最終的に塩分のコントロールが旅程を楽しくするかどうかを左右すると思います。塩分はとりすぎ注意です!!
カトゥナーヤカ国際空港
カトゥナーヤカ国際空港に到着!ややこしい話ですが、バンダーラナーヤカ国際空港・コロンボ国際空港とも呼ばれています。
11時間のフライトを終えてようやく到着、やはり周辺の国際空港の中ではやや遅れをとっている感は否めない感じです。フリーWi-Fiも無いのでちょっと不便ですがノスタルジーを感じる設えでテンション上がってきます。
私たちのような外国人がスリランカに入国するにはVISAが必要です。しかし何と当日その場で発行可能なため、インドなどとは違って事前に大使館に行ったりしてVISAを取っていく必要はありません。
空港の入国審査カウンターの脇にVISAの発給ができる場所がありますので、ここで取得します。40USD(約5,000円)掛かります。カードは使えますがアメックスは機能しません、マスターカードかVISAカード必須です。VISAカードでVISA取得・・・・失礼しました。
入国審査を終えると空港内の免税売店には家電がズラリ!電気のインフラ整備ができて住宅の中の備品が好調なのでしょうね、免税で家電を買って・・・どこに送るんだろう?しかし日本製はあまり見当たりません・・・がんばれ日本企業!
アライバルゲートを出て取引先と合流しました。上写真中央正面の黒いボードが入国してくる飛行機のリストです。ハブ空港としては余り立地が良くないので便数もこんな感じです。コンパクトですが機能的な空港という印象。早速ホテルへ届けてもらって今日のところは終了です。
翌日ホテル前の道路の写真です。スリランカの道路事情はまだまだインフラ整備が成っておらず、やや無秩序な状況です。実際に道路を車で走っていると、車線のラインがないので、有っても完全に無視しています(笑)隙間さえあれば割り込みしてきますし、対向車線には飛び出すしで、とにかく荒っぽい運転でハラハラします。そもそも信号がコロンボ市内にはチラホラあるのですが、田舎に行くと信号も無いので、交差点の侵入は毎度緊張の連続です(笑)ただし混雑しているのでスピードは市内を走るときは平均25キロ・・・出て40キロが良いところで、重大事故にならなそうなのが救いですね。
バス交通も発達しているのでバスも多く、しかもインドから大量のトゥクトゥクが輸入されていて、低速で走るバスやトゥクトゥクの多さが渋滞の一因になっているようにも感じました。トゥクトゥクはそこら中の道路わきに待機しています。現地の人もちょっとした移動の足に使っているようです。爆発的に多い車やバイク、トゥクトゥクに対して排ガス規制などは当然のようになされていませんので喉が弱い方はマスク必須です。
コロンボ市内を中心に全国に貼りめぐらされたバス交通網がスリランカでは有力な交通手段。この日も多くの人がバスに乗ってコロンボ市内へやってきていました。写真をよく見るとちょっとおかしな事に気が付きます、、、スリランカの車は日本と同じ左側通行の右ハンドル。私は助手席で写真を撮ったのですがこのアングルです(笑)
渋滞を避けて先方事務所近くのホテルにしたのでスムーズに事務所のあるエリアまで移動できました。スリランカに旅行される際には移動距離よりもかかる時間を調べた方が良いです。道路事情が本当に読めないので、例えば30キロの道のりで2時間半くらいは普通にかかってしまいます。しかも山道だった場合はもっとかかってしまいます。
宝石商の事務所入り口はどの国も厳重な警備態勢が敷かれています。これは万国共通ですね、スリランカの取引先も事務所入り口から実際に事務所までこうしたオートロック式の鉄扉を2枚超えていくことになります。取引先の事務所はいわゆる官公庁などが多く立地するエリアにあるのですが、それでも看板は揚げずに運営しています。事務所内には常時30人くらいのメンバーが詰めており、それぞれ取引や医師の検品、研磨や仕上げなどが行われています。
2002年来の取引先「ミスターN」
スリランカの取引先ミスターNと初めて会ったのは2002年の香港ジュエリーショウでした。当時非加熱サファイヤを探していた私はかなりしつこく、しかも熱心に彼のブースでサファイヤのことについて質問し、さまざまな石を検品させてもらいました。
その時これはと思う美しいサファイヤと出会いました。対応してくれたミスターNはサファイヤの生い立ちや産地の特性、加熱非加熱についてなど、かなり詳しく教えてくれました。私とミスターNは初対面だったのにもかかわらず、かなりの時間を費やした覚えがあります。
そうして選んだサファイヤだったのですが、あいにく手持ちのなかった私は魅力的なサファイヤだったので値決めして配送してもらおうか、どうしようかと迷っていると、彼は「気にしないで、そのまま持って行け!名刺と交換だ!」と言い出しました。1つだけを送る手間(保険や配送料、梱包などの諸業務)を考えたのかどうか良く判りませんが、その時はお金を支払わずに名刺とサファイヤを交換して来たのでした。
当時の事を「何でそんな事(初対面の日本人なのに名刺と石を交換)したのか?」とミスターN聞いてみると「熱心にサファイヤを見て真摯に商売に向き合う姿勢は見ればわかるからさ、長く付き合える良い取引き先は何にも変えれないモノだ」と言っていました。
今から思えばすごい話ですが、その時は感激して石を受け取り名刺を置いて来たのでした。日本に帰国後、宝石の鑑定鑑別機関にサファイヤを送り非加熱レポートを発行してもらってから、サファイヤの代金を振り込んだ記憶があります。
当時加熱非加熱は判断が難しく非加熱だといわれて手に入れても鑑定鑑別機関では加熱の痕跡有りで上がってきてしまったり、研磨の時に出る摩擦熱の影響を受けたサファイヤを加熱処理というかどうか?等も見解が割れており真実よりも事実が優先されている状況でした。
しかしミスターNのサファイヤは今までに一度も非加熱であるものに関しては非加熱を外しませんし嘘や偽りだったことは一度もないのです。
私にとっては【何を買うか?よりも誰から買うか?】が重要と言われる宝石業界の格言通りの出来事でした。
早速頼んでおいたお目当てのサファイヤを検品します。宝石は「足で稼いで探す」か「待って探す」の2択でしか本当に良いものには出会えません。そこで今回は両方のオプションで臨んでみることにしました、ミスターNには事前に欲しいものを伝えてスリランカの原石マーケットで該当するサファイヤがあったらキープしておいてくれとお願いしておいたのです。
今回の目的はロイヤルブルーの非加熱ナチュラル・サファイヤを手に入れること。
通常加熱して色を整えるサファイヤという宝石の中で無処理のナチュラルは非常に希少です。ただでさえ希少なナチュラル・サファイヤの中で青色の最高色「ロイヤルブルー」を探しているのですから、なかなか見つからなくて当たり前なのですが、事前に期間を取って探してもらっていますのでお目当てのサファイヤを仕入れることができました。
サファイヤのカラーバリエーション
サファイヤには様々なカラーバリエーションがあります。有名なところでは赤いサファイヤは宝石名が変わってルビーと呼ばれます。そのほかグリーンやイエローなどサファイヤには様々なバリエーションがあるのです。なかにはチェンジカラータイプのサファイヤもごく稀に産出します。さらには内包する針状のインクリュージョンが原因でスター効果を発揮するサファイヤも有ります。豊富なカラーとバリエーションがサファイヤの人気の秘密かもしれませんね!
コランダム(サファイヤ)のラフカットからフルカットまで
スリランカに限らず世界で活躍する有力な宝石サプライヤーは宝石の鉱山を所有していたり、カットや研磨を所有しており、自社内で採掘や研磨等が行える場合が多いのですが、ミスターNの会社も事務所内にカット・研磨・仕上げ磨きの3工程を行える施設が併設されており、常時5~10人のサファイヤ専門の加工職人がそこで働いています。
ダイヤモンドでは常識的となった輝く為の形に研磨するノウハウは、色合いを重視して研磨される色石の世界では浸透していませんし、仕上に対する考え方や、技術の在り様そのものが異なっています。サファイヤにはサファイヤ独自のカット研磨のノウハウがあり、長い間に培われた美しい色合いを引き出す為の技術が蓄積されています。宝石は最後には人の手で仕上げるのですが、それは何時も熟練の職人たちなのです。
スリランカでは採掘権を政府の宝飾省に届け出て鉱山の操業をしますが、ライセンスの有効期限はなんと1年と短く、同じ場所に大規模の設備投資をすることが非常に難しいのだとか、そのためサファイヤなどの宝石を国を跨いで商売する場合、多くのサプライヤーは自社でカット・研磨を行える施設を運営しているケースがほとんどです。
マーケットで完成品として出ているサファイヤの中には歩留まり優先で形は悪いが重さを重く残すようにカット研磨してある品物が少なくありません。ミスターNの加工工場ではその場で理想的な輝きを発揮するようにサファイヤを研磨して仕上げてしまいます。
サファイヤの研磨
スリランカのサファイヤは一時鉱床ではなくいわゆる二次鉱床採掘が基本です。リバー鉱床に堆積したサファイヤなどの原石は角が取れて丸くなっている場合が多いのです。鉱山の有るラトゥナプラ(Ratnapura)地域は山岳地帯です。
鉱山はこうした山岳地帯の岩山と岩山の間にある谷合地域で行われます。谷合には古い土砂が堆積した優良な二次鉱床が広がっているのです。比較的やわらかな堆積鉱床なので採掘方法は基本的に手掘りです。産出するサファイヤは六方晶系ですが川に流されたり、他の鉱物とこすれあって流されてきて堆積しているため、角がなく丸みを帯びた形状をしています。その為どの方向からカット・研磨するべきか?は職人の経験で導き出していきます。
※サファイヤは結晶方向を持つ六方晶なのでテーブルを晶系に対して垂直に取らないと色が割れて色ムラが出てしまうなど、均一な色のモザイクが得られない場合があるのです。正面(フェイスアップ)で観察したときに2色が混ざったように見える多くのサファイヤは結晶方向をヨコか斜めに取らざるを得なかった生地不足の原石であると推測できるのです。
※写真はトルマリンの原石、トルマリンもサファイヤと同じ六方晶なので結晶の見極め方はサファイヤと同じ。
①原石のガードリングとテーブルカット
サファイヤの原石は研磨のおおざっぱなプランニングされた後にカット職人の手で大まかにカットされます。カット職人は大まかに宝石の結晶方向を見定めてテーブルとガードルを決めて磨きだしていきます。
②ファセッティング(面取り)
ほとんどの宝石は色原因となる内包物を含有しない(含まない)場合は無色です。その透明な結晶の中に色原因となる内包物が内包することで魅力的な色が付けられています。
サファイヤはコランダムという鉱物、酸化アルミニウムの鉱物名がコランダムです。酸化アルミニウムに鉄とチタンが含有して関係しあうと美しい青色を発生させます。赤のルビーはクロムを0.5~1%含有することで美しい赤色を発生させています。ピンクサファイヤは0.1%程度のクロム含有、2%以上のクロム含有ではサファイヤの結晶は黒もしくは灰色になってしまい、宝石としての価値は無くなってしまいます。
自然界で偶然にも色原因となる要素を結晶内に取り込み、しかも他部分は透明でピュアな結晶であることが宝石となる条件なのです。そうした美しい宝石結晶はファセッティングすることによって美しい色と光のモザイクを引き出すことができます。
ダイヤモンドの研磨板スカイフを簡易に小型化したような研磨機です。ドープと呼ばれる固定具にサファイヤを固定して回転する研磨板に押し当ててこすりながら研磨していきます。
右手にドープ、左手はドープの高さを調節するグリップを常に微調整しながら研磨します。この時研磨師はファセッティングしたい面の状態を1秒間程度研磨板に押し当てて研磨します。研磨面は即ルーペチェック、そうした一秒間隔程度の作業を無数に繰り返しながら文字通り注意深くサファイヤと研磨版の摩擦に全神経を集中して研磨していきます。
研磨板の逆サイドからは絶えず水が供給されており、フラックス材となるサファイヤかダイヤモンドの粉を右手で研磨板に擦り付けて表面状態を維持する仕組み。上写真はガードリング、ドープに固定する前段階でサファイヤ輪郭となるガードルファセットを仕上げているところ。ドープもダイヤモンド用ほど複雑な造りではなく石を固定する場所を回転させるダイヤルも手動で調整できるようになっています。ファセットをつける職人が決められた面数の研磨面を付けていきます。色石は輝きよりも色の美しさを優先して研磨しますので、例えばパビリオンファセットもダイヤモンドでいうところのエクストラファセットは当たり前の様に取られています。ブリリアントカットは少なく、亜型のステップカットでキューレット付近だけ三角形のファセット面に仕上げることが多いようです。サファイヤの多くはオーバルミックスカットというフェイスアップで小判型の形に研磨されます
③最終仕上げ
最後に仕上げ職人がそれぞれのファセットの接合面を調整します。この作業によって宝石の美しさは格段に上がっていきます。ファセッティングだけなら もしかしたらスリランカの観光地でもお願いすれば出来るかもしれません、しかしこの最終仕上げの技術者は高い集中力と技術が要求されるため、高いレベルで作業できる職人はスリランカにも少数しかいません。美しくサファイヤなどの宝石類を仕上げきるには熟練の技術が必要なのです。
一見ファセッティングからの仕上げで十分な気もしますが、ルーペ等の拡大鏡で注意深く観察すると、面と面の接合部分が甘かったり、ポリッシュラインやスクラッチ、ニック等の細かな修正が必要な個所が見えてきます。研磨の甘い宝石はガードル面にラフガードルという原石部分が残ていたり、もっと酷いと内包物が研磨面まで到達していたり・・・このように最終研磨者はファセッターがダイヤモンドパウダーで研磨した荒い研磨面を美しく仕上げます。
こうした作業工程を経てミスターNのサファイヤは特別な色合いをそのままに強い輝きを放つサファイヤに仕上げられていくのです。
午後からはさらに多くのスリランカ産宝石を検品していきます。
タトウ紙に包まれた宝石群、このタトウ紙1包みが1パーセル(ロット)として扱われる。写真のイエローサファイヤなら3つで1つのパーセル(ロット)なので、もしも気に入って欲しい場合は3つとも買わなければならない。
ランチタイム後の13:00~17:00まではノンストップでひたすら検品作業、こんな感じのタトウ紙の山を50くらい検品し終えました、、、おそらく1,500~2,000ピースのスリランカ産宝石をチェックしました。結構ぐったり疲労感・・・・
午後の検品はまさに終わりなき検品地獄の様相を呈してきました。取引先のミスターNもずっと付きっ切りでタトウ紙の中から美しい1ピースを発見する手伝いをしてくれます。時折「これはどうか?」と見せてきたりします。
名産品のセイロンティーを飲みながら永遠と検品します。余談ですがスリランカの名産品”セイロンティー”ですがこの紅茶文化はコーヒー豆の栽培が有るとき雨の影響で大打撃を受けてしまい、その代替えで栽培した紅茶が爆発的に売れて人気になった事が発端なんだとか、赤道直下なのでコーヒー栽培は確かに適しているスリランカの知られざる豆知識です。※最近ではコーヒー栽培も徐々に復活しており、セイロンコーヒーの人気も上々だとか。
スリランカ旅行の際に気を付ける事:其の1・ミルクティーのミルクに注意が必要です。沸騰したお湯で出す紅茶は問題ないのですがミルクティーにする場合のミルクは日本の方の場合体質によって合わない場合もありますので、どんなミルクで割ってくれるのか確認した方が良いと思います。
そうこうしている内に、途中で山のように出てくるパーセルの中に気になるルビーを発見!スリランカ産ルビーはあまり有名ではありません、なぜなら赤い色合いはやや薄く出ることが多く鮮烈な赤色が特徴のルビーの中ではミャンマーやタイの方が有名です。しかも今回の目的はナチュラル無処理の宝石なのでなおさらです。それでももし見つける事が出来れば価格はミャンマーのルビーよりもかなりリーズナブルでしかも透明度は高く美しいスリランカ産ですので貴重な逸品となります。
スリランカ産ルビー4.5S
タトウ紙を見ると1.11ctの表記、ルビーは歩留まり優先で研磨されており、やや左右の対称性が良くありません。それでも価格交渉して手に入れることにしました。
値決めして合意すると、さっそく先ほどの研磨師のところへルビーを持って行き、気になっていた対称性を修正させます。仕上がりがこちら↑先ほどから重さを0.04ロストして、最終的には1.07ctのスリランカ産・非加熱ナチュラル・ルビーとして生まれ変わりました。しかもパビリオンファセットの角度も少し調整して明度もグッと上がって美しい赤のモザイクが全体に広がった綺麗なルビーになりました。4.5Sといったところでしょうか。価格はミャンマー産の2~4分の1とリーズナブル
さらに発見!
ロイヤルブルーのサファイヤ5.5S
2個パーセルのブルー・サファイヤ、1つはブラウンスポットがあり、少し黒味の有る結晶、もう一つは正しくロイヤルブルーの逸品、二つは似ているようで全く異なる性質のブルー・サファイヤなのですが、それを一つのパーセルに入れています。ブラウンスポットのある方は色味もそうですがやや美しさに欠けるので6Aと言った所でしょうか、こうした二つのパーセルの場合は、美しい方の値段で二個を単純に二倍の値段をつけることが多いので要注意です。しぶとく交渉して明日へ持ち越しとなりました。
この二つもルーペで覗き込むとスリランカ産特有の細くて長いシルクインクリュージョンが流れ星のように入っていて、宝石の学校で見る非加熱ナチュラルのお手本のような美しい結晶。両方とも5.5S評価です。
ロイヤルブルーサファイヤ5S
そしてまるでカシミール・サファイヤのようなシルキーベルベットタッチのブルー・サファイヤも発見!フェイスアップで見たときに片方に白い色だまりが有って、これが全体に柔らかい印象を与えているのでしょうか、赤味の入った濃紺でいて明度を失わず、ロイヤルブルーでしかもシルキーベルベットの逸品。スリランカにもこういう色合いのサファイヤも有るのですね!タトウ紙を開けた瞬間に目に飛び込んでくる 隠し切れない美しさを持つ宝石たち、美しい逸品との対面はいつも感激してしまいます。5S評価です。
まだまだ紹介したいサファイヤはいっぱいあったのですが、詳細は店頭スタッフまでお声かけください。ご紹介させていただきます。
検品を終えて初日終了・・・明日は鉱山へ行きます。
ハイランドコンプレックスが生み出したスリランカの宝石
鉱山があるのはラトゥナプラ地域、ラトゥナプラはスリランカの言葉シンハラ語で“宝石の町”という意味です。スリランカでの主要産業である宝石採掘は政府によって管理されています。宝石採掘するためには政府の宝飾局に届け出て採掘権を発行される必要があります。スリランカの宝飾局では自然保護の観点で機械を使った大規模な採掘をほとんど許しません。
ところで、なぜスリランカで宝石がたくさん採れるのか?と言えば、今から9億5千万年~5億5年万年前の間、大陸は移動し、実はスリランカは大陸移動説上の重要な超大陸コンドワナの一部で、しかもスリランカはその造山帯に位置していたようです。現在の地図ではインドから切り離された島というイメージですが、実はインドの方がスリランカから離れて行ってしまって今の島になっているというのが正しいのです。日本では南極の地層調査で、コンドワナ大陸の時には南極とスリランカは地続きであったとして南極の調査隊がスリランカの地層を調べたりするほどです。
インド、スリランカと南極は一つの大陸だったのです。南極もコンドワナ大陸時代はスリランカ地続きだったなんて、にわかには信じられないような話です。このようにスリランカは地層学的にも重要な島なのです。
ラトゥナプラのような宝石を産出する地層の多くはハイランドコンプレックスという変成岩の集合地域です。上写真の薄く青色に塗った部分がハイランドコンプレックスです。この場所は造山帯だった事もあり中心部には2,000メートル級の山々が連なります。サファイヤを含むスリランカの宝石はこうした地層学上重要な場所から採取されるため、一時鉱床である山を直接採掘することには政府も慎重になっています。
インドはユーラシア大陸にぶつかる形で今の位置にあります。
その時行き場のなかった部分が隆起してヒマラヤ山脈を形成しているのです。一方スリランカはインドが北西へ南極が南西へ移動してちょうど引き裂かれる形になります。その時地殻の隙間からサファイヤを含むマグマが隆起して山岳帯を形成したことで高い山が出現します。
ハイランドコンプレックスには地殻変動によって生み出された上等の変成岩が集合しているのです。現在スリランカの二次鉱床はこうして隆起した変成岩が冷えて固まり、雨風に壊されて流されて堆積した部分で行われているのです。
ハイランドコンプレックスの造山帯で宝石が堆積していると考えられている二次鉱床のあるエリアはセイロン島の中心部から西南部にかけて帯状に伸びるエリアです。このエリアの二次鉱床はすべて宝石を産出する可能性のあるエリアです。中でも濃く塗った部分は良質の堆積鉱床からなる地域なのです。
ハイランドコンプレックスは地球の地層学上とても重要なエリアであることから現在スリランカでは一時鉱床を採掘することは無いようです。したがって採掘は二次鉱床で、しかも方法は露天手掘りスタイルとなります。大規模な機械掘りでは見ることのできない採掘の現場がスリランカにはあるのです。
コロンボからラトゥナプラへは直線距離で約40キロしか離れていませんが、道路事情と渋滞の関係で車では約3時間の道のり、しかも途中から山道で右へ左へとクネクネと曲がりくねった道を行きます。右へ揺られて左に揺られて~~~車酔いする方には地獄の道のりのようです。
スリランカは人口約2200万人。写真のようなジャングル地帯でも路肩の道から森の中に入るとそこには家が有ったり現地の方の生活が有ったりします。下水や電機のインフラが十分整備されているとは言えないエリアもまだまだ沢山あります。山道では野生の象に遭遇することもあり、その場合は刺激しないようにしなければなりません、スリランカでは年間総統の人数が野生の象とのトラブルで命を落としています。
露天掘りのピット(坑道)
露天掘りではピットと呼ばれる2×2メートルの縦穴を掘ります。ピットを掘る時に出る土砂をバケツや容器に入れて地上へ彫り上げて、注意深く調べる採掘方法です。その際に水は非常に重要です。サファイヤの比重が重いことを利用して、砂利を水洗いして調べる方法が一般的なのです。今回訪れたラトゥナプラ地域のピットは稲作の田んぼのあるエリアに隣接しており、稲作用の用水を使って砂利を洗う方法で採掘していました。
採掘期間中ピットは複数の工夫と警備の人員で守られています。宝石採掘現場なので警備体制は厳重です。しかもエリアごとに警察の巡回も頻繁で治安の維持に努めています。ミスターNの採掘現場に入る際も、そのエリアを管理する警察に視察を届け出て、それから鉱山のあるエリアへ立ち入るという具合です。
ピットの深さは10m程度が平均のようです。今まで最深は40m級のピットも掘ったことがあるそうです。ゴムの木をピットの壁面に補強材として入れてピットが崩れてこないように補強し掘り進めます。
ピット内部、このピットは約10m掘り進めてあります。まだまだ可能性がある場所らしく後5mは掘り進むのだとか、ロープの先には砂利を地上に挙げるためのフックが付けてあり、手動でロープを巻き上げると砂利を引き上げる仕組みになっています。
ピットの周りには工夫が寝泊まりする簡単な宿泊施設もあります。採掘期間中工夫たちはここに寝泊まりしています。かなりの簡易施設なので旅行者や一般的な日本人が寝泊まりするのは厳しい環境です。採掘期間中は警護の意味も含めて期間終了まで工夫がこのエリアから出ていくことは無いのだとか、夜間は採掘が禁止されています。
電気のインフラが整っていないので昼間は大型の発電モーターを稼働させて坑道内を照らしています。発電モーターは近隣に住まう住民にとって夜間は騒音でうるさいのと、採掘した宝石類の管理や窃盗問題などに対処するため採掘は行われません。
近くには埋め立てられた古いピット跡がいくつもありました。実際には掘ってみても何も出ないこともあるのだとか・・・まさに一獲千金の世界!
水田の近くでの採掘ですのでピット穴の海抜は周りからほとんど高くない為、雨季には雨がピット内に流れ込んで溜まってしまい採掘ができなくなります。スリランカでは2~5月はほとんど雨が降らない為、この季節が採掘に最も適した季節と言えます。逆に偏西風に乗ってモンスーンが来る雨季は採掘できなくなってしまいます。
鉱山地帯を後にして再びコロンボ迄3時間のドライブです。・・・スリランカに旅行される際は地図上で近くに見えても行先で宿を手配して動く方が良いかもしれません、一日の大半が移動時間になってしまうので非効率ですね、初日の検品地獄から二日目はドライブ三昧でした。こうして2日目無事終了しました。
いよいよ最終日
飛行期フライト時刻は午後1時という事で朝から事務所にて最終の検品に向かいます。今回の目的だった品物のほとんどを最終確認して最後の品物を検品して終了です。
ロイヤルブルーのサファイヤばかりをフォーカスしましたが実はスリランカサファイヤの中で特別な人気を誇る色があります。それはピンキッシュオレンジのサファイヤ通称「パパラチア」。
パパラチアは厳密にはスリランカ産出のサファイヤにしか与えられない名前です。ほかのサファイヤ産地タイやミャンマーで産出したピンキッシュオレンジのサファイヤが有ったとしてもそれはパパラチアとは呼びません、(産地による特別な名前があるのにも係わらず未だにサファイヤが産地を明示せずに売られているのはホント変ですよね?)パパラチアは色の質も優しくそして強い色合いで日本でも絶大な人気を誇ります。
さて、2000年にサファイヤの過熱処理でベリリウムを用いて色の調整をする通称“新加熱”が出現した時には、美しい青色やルビーに混ざって本来希少なピンキッシュオレンジのパパラチアも人工的色処理で市場に出たことがありました。登場当初、処理の看破が出来なかったため市場は大混乱に、サファイヤは怖くて買い付けを控えるバイヤーが続出、大問題となった記憶があます。
現在は新加熱の看破法が確立された事と、処理石に市場価値がつかないことで新加熱問題は沈静化しています。今回スリランカ産のサファイヤの中でもパパラチアは目的では無いのでリクエストもしていませんでしたが、、、最終日に出てきました。
パパラチア、蓮の花という名前のサファイヤ
スリランカ産特有の細くて長いシルクが美しいピンキッシュオレンジのサファイヤ「パパラチア」です。これだけ美しい非加熱パパラチアにはめったにお目にかかれません!美しい中間色と優しいピンクオレンジが何とも言えない魅力を放つ一品です。
サンスクリット語で蓮の花という意味を持つパパラチアは人口の80%以上が仏教徒のスリランカでも特に人気のあるカラーです。仏教の教えの中で泥の沼地で育ち美しい花を咲かせる蓮華は重要な花と言えます。蓮の咲く泥の沼地は汚辱にまみれた人間の世を表していて、そこから生まれて来て泥に汚されない蓮は、人の目指すべき在り様を表していると言います。
皆さんも仏陀(ぶっだ)が蓮の花から生まれて来て「天上天下唯我独尊」と唱えている宗教画などは見たことがあるのではないでしょうか?蓮は仏教の中で外せない神聖な花なのです。
ピンクとオレンジの中間色である蓮の花、蓮の花を連想させるカラーのサファイヤをパパラチアと呼びます。
このパパラチアがどうなったかはBROOCHの店頭スタッフまでお問い合わせください(笑)
そのほか、パパラチアサファイヤは”インド洋に沈む夕日の美しさ”等と言われ、その美しさに人々が魅了される特別なサファイヤなのです。
さらにクリソベリルの産地でもあるスリランカでは
クリスベリルキャッツアイの特品も出てきました。まぁお目当てでないものはどんなに良くても今回はパスしておきます。がそれにしても美しい逸品です。この他スターサファイヤやスタールビー、グリーンガーネットや各種カラートルマリン、アレキサンドライト等も美しい品物を検品しました。
最期に書類の処理を終えるとランチ前に出発して空港へ向かいます。これでスリランカでサファイヤを買い付ける旅は終わりです。宝石商として昭和19年にスタートしたBROOCH(ジュエリーショップマキノ)は今後も世界中から本当に美しい宝石を新潟の皆さんにご紹介したいと思います。
新潟でサファイヤをお探しならぜひBROOCHへお越しください!