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ルビー買付日記 in バンコク(タイ)

ルビー買付日記 in バンコク(タイ)

更新:2012年09月07日

2012年9月某日、残暑厳しい新潟を出発!今回の出張の最終目的地はタイ王国、バンコク、今までは新潟空港から、お隣の国、韓国の仁川(インチョン)へ入り、インチョンをハブ空港に使ってそこからバンコクへ向けて旅立っていたましたが、なんと新潟から成田へ空港路線が開通!しかも乗り継ぎのアクセス抜群と言う事で今回は久々に成田空港経由のバンコク行きとなりました。
余談ですが、最初から成田空港をハブ化して取り組めば韓国にここまでイニシアチブを取られる事は無かったでしょうね、成田空港はハブ空港化するための新しい建物も出来ていて快適でした。

成田空港経由のバンコク行き

 

という事で、新潟発成田便で成田空港に到着!わずか2時間の乗り継ぎで一路タイ王国の首都

バンコク、スワンナプーム国際空港

バンコク、スワンナプーム国際空港へ!日本から見たら、異文化の合流地点らしく異国情緒あふれる国際空港、タイは観光立国でもあるので、この辺の設えはハイレベル。到着予定は現地時間で夜の11時ころ、夜食を食べて次の日から検品三昧だぁ。

様々な顔を持つ繁華街「シーロム通り」

到着してみると9月のバンコクは以外にも新潟より涼しいくらいの過し易いやすい気候、南の国なので寒いと言う事は無く、快適な旅になりそうで一安心。ちなみに今回の旅の目的は色石の王様『ルビー』・・・実はBROOCHのオープンから丸6年間、封印していた宝石屋の仕事をしに来たのです。今回は気合を入れて買い付けるぞ!さらに今回、社長と相談役を連れて3人でタイにやってきた事だし~、頑張っていこう!って気合を入てれてたら、気が付いたら深夜2時、時差ぼけは無いので眠いですが、なかなか寝付けない、おなかも減ってきたので、ホテル近くのセブンイレブンで夜食を物色することに、折角なのでタイ料理っぽいものをチョイス、チャーハン的な弁当とコーラにしてみました。

チャーハン的な弁当とコーラ

さて、バンコクのもう一つの楽しみは食事、バンコクには中国系華僑の取り仕切る中国人街いわゆる繁華街や、昔から比較的親日国だと言う事と、宝石ビジネスでバブルの頃にはたくさんの日本人が在住していた名残で日本人街なんかも有ったりする国際都市、当然のごとく「ご当地系」も充実していて、しかも海も近く、南国特有のフルーツも豊富、異文化の合流地点なので、食のレベルはかなり高いです。という事で当然グルメツアーも楽しみの一つになります。タイに旅行される際は予定をしっかり立てて行くといいと思います。

バンコクのシーロム通の道路この道のホテルが私(専務T)の定宿だ、毎朝この道を”てくてく”歩いて宝石の取引所へ通う、取引所と言っても宝石街のビルの中にある事務所の様な施設の中なのでセキュリティー万全の安全ゾーンで仕事できます。ちなみにシーロム通りと聞くと、夜にはナイトマーケットの露店が歩道にびっしりと並ぶイメージがあるかもしれませんが、宝石マーケットは繁華なナイトマーケットのずっとずっと向こうにあるので、この辺は割とビジネス街といったエリア、ちなみにナイトマーケットでは、南国フルーツジュースなどの飲み物屋台やタイ料理?系の食べ物屋台、さらにはお土産系の民芸品からブランドのコピー商品のお店から、何だか解らない雑貨屋さんまで、ありとあらゆるものが売られています(笑)、シーロムの代表格が「パッポン」、ここは外国人の多く集まる所なので、観光スポット化している部分も多く、イメージ的には物凄い種類の色々なモノが売ってる上野の「アメ横」ってところです。価格は言い値で、値切って買うのが常套手段の面白露店がズラリと並びます。大人のお店もかなりの店数が有り(笑)深夜まで賑わっています。

海外で自分が日本人で有ることを意識する一つの要素が僕の場合、その国に走っている「車」、タイのタクシーは全部日本製でした!走っている車も日本製、車や電化製品の分野での日本の占有率はほとんど100%なのに・・・携帯電話は韓国に完全にやられている感じでした!何とかしないとね!ちなみ僕の携帯電話はSONYのエクスぺリアです。

(上写真)朝のシーロム通に出ている露天商、フルーツの屋台や朝食?の屋台多彩。毎年7%台の経済成長を示しているタイ王国ですが路地を入った地元人の生活圏内に入ればまだまだ整備されきらないライフラインや生活インフラの現状が有ります。こんな風景はバンコクの街のあちこちで見る事が出来ます。

セブンイレブンの数にもビックリ!夜食のタイ風チャーハン付属のタレが激辛ソースだった!辛い食べ物が得意な人も要注意なレベル!!特に付属のタレには気を付けましょう(笑)

昨日の夜食タイ料理的なチャーハン、さすがに赤道直下、常夏の国!食べ物はこのくらいの辛さじゃないと、雑菌等々の色々なものが殺菌できなかったんでしょうね、・・・なんて思いながらなんとか完食しました!さて明日からはルビーの買い付けだ!頑張るぞ!

ルビー&サファイアの検品開始

いよいよ検品開始

ドンドン来るよ~!業界用語で「パーセル」という宝石のくくり単位ごとに、上写真)紙の薬入れに入った宝石が「どん!」と山積みになりました、この中に運命のルビーとの出会いがあるんでしょうか?期待しながらガンガン検品していく事に、毎回ルビーやサファイアの買い付けに来ると、朝10時にこの席に座って、昼過ぎまで黙々と石の検品を続けます、目を引いた宝石は横に弾きながら次々にチェックていきます。ちなみに一回の買い付けで検品する石の数は・・・ざっと2000以上!とにかく頭の中が空っぽになるまでルビーやサファイアを見て、みて、観まくります。その際のチェック項目は様々有りますが、宝石の買い付けで一番大事なのは・・・実はパッと見の美しさなんです。※僕の場合だけかもしれません・・・(笑)

宝石の入ったパーセル(薬袋)を開けた瞬間のパッと見た感じのインスピレーションで、ほとんどの宝石を買うか?買わないか?の第一段階を決定していきます、その後、宝石の形、色の濃淡と色ムラ、ルーペなどの拡大鏡を使って内包物や傷などのチェックをします。同時に本物かどうか?もチェックします。内包物の拡大検査では大まかな産地についても看破していきます。宝石屋の仕事っぽいですね、整理しますと、宝石種、処理の有無、原産地、サイズ(カラット)、形、色、濃淡、この辺を考えながら、パッと見た感じが綺麗だ!と感じるかどうか?が一番に大切なポイント、これを頼りにどんどんチェックしていきます。

昼食前のテーブルの上にはブルーサファイアが登場、近隣の宝石関係の事務所に保有している宝石を集めて一斉に比較検討しながらチェックします。各宝石事務所はある程度の価格決定権を持った宝石ブローカーをマーケット内に数名抱えていて、その人間が宝石と一緒に事務所から事務所へと動いて宝石のやり取りをしています。バンコクは宝石の集散地、世界中の宝石バイヤーが集まってきますので、そうした特殊な取引方法が確立されています。

写真のブルーサファイアのサイズは0.3ct前後、一つ一つ注意深く検品していきます。とルビーのBOXが見えますがあの箱の中に100個のルビーが!しかもすべてミャンマー産の天然無処理(非加熱)ルビー、凄い数です。加熱処理ルビーは、ほとんど無限に在庫があるんですが僕の狙いは天然無処理NN(ナチュラル・ナチュラル)と呼ばれる、いわゆる非加熱・無処理のルビーだけ!ちなみにルビーとサファイアは同じコランダムという鉱物、色の違いで宝石名が変化します。コランダムの赤色をルビー、その他の色をサファイアと呼びます。
サファイアの代表カラーは青色(ブルー)

ルーペや手持ちの鑑定鑑別機材では加熱の有無の大まかな部分は看破できますが、低温加熱や専用の機材がないと見分けることにできない処理については、日本に持ち帰ってから鑑定鑑別機関に持ち込んで調べてもらうことにしています。

宝石の処理

専門用語が多くなったので少し説明、宝石の鑑別書には現在天然宝石は表記法が大きく2種類あります、1つが天然無処理(NN)、もう1つが主に色調の改変を目的とした処理の施された天然宝石のトリートメント(TR)です。数年前までは宝石業界には天然無処理、エンハンスメント、トリートメントの3種類の宝石が存在していました。が2004年以降は鑑定鑑別書の表記の内容を、エンドユーザーとなる「お客様」にとって分かりやすいようにと表現方法を変更しています。

天然宝石は原石を掘り上げてから様々な加工をして製品化されていますが、代表的な加工は、研磨・カットです。ほとんどの宝石は彫り上げられてから研磨して形を整えるカットを施すことになるので、個の研磨やカットを処理していると感じる方のほうが少ないのではないかと思います。ちなみに鑑別団体協議会の解釈としては、宝石のカットは宝石のもともと持つ美しさを引き出す処理なので、天然石の範囲内です。だそうです。

この他に宝石の美しさを引き出すためには様々な処理が行われていますが、この処理の程度に対して「エンハンスメント」と「トリートメント」と言う表現で区別されていました、
現在は、

  1. 天然無処理(Natural・Natural・チュラル・ナチュラル)
  2. 天然改良(Natural・Enhancement)、ここまでは天然宝石の範囲内です。
  3. 天然改変(トリートメントTreatment)人工的に宝石の色調改良を目的に着色処理したり、透明度の向上を目的に不純物を取り除いたりしたもの、

の3種類に分類できます。

解り易く美しさの例えとして人間の女性で表現すると・・・

  1. すっぴん状態→天然無処理(Natural・Natural・チュラル・ナチュラル)、
  2. お化粧している状態→天然改良(Natural・Enhancement)ここまでは天然の範囲内です。
  3. 整形手術を受けている状態→天然改変(トリートメントTreatment)となります。
    ちなみに毛染めは色調の改変をしていますのでトリートメント扱いです。

ただし実際は天然無処理(Natural・Natural・チュラル・ナチュラル)で取り扱われている宝石はダイヤモンド、クリソベリル、ガーネット、ペリドットなど、もともと処理の必要がない4種類の宝石だけ、通常加熱処理を必要とするルビーやサファイアの天然無処理(ナチュラル・ナチュラル)は非常に稀で出会う事は本当に幸運な事です!(※処理しなければ天然無処理の範囲内なのですが、あくまで宝石として通用するレベルでのお話です。)

通常処理を必要とする宝石の鑑別書(AGL 宝石鑑別団体協議会発行の)には「宝石名〇〇には一般的にエンハンスメントが行われています。」という意味の分かりにくい一文が記載されます。
また、トリートメント宝石の場合は「宝石名天然〇〇(処理石)」や「トリーテッド(TR)」などの記載が入りますので、処理石なのか?天然宝石なのか?は比較的解り易く簡単に判断できるようになりました、しかし、天然の範囲内であるエンハンスメントに関してはいまだに解り難い状態が続いています。

宝石は、様々な記憶や思い出を閉じ込めて宝物として使う大切なモノなので、お持ちになる際にそれがどんなものなのか?は知っておいた方が良いと思います。たとえトリートメント宝石であってもお使いいただく方にとっての「宝物」価値はプライスレスだからです。
JJA 日本ジュエリー協会とAGL宝石鑑別団体協議会ではエンハンスメント「軽い処理はしてありますが天然石の範囲内です」とトリートメント「処理石」は各宝石種毎に処理に該当する項目が決められていて、この処理方法は、ある宝石ではエンハンスメント処理だが、ある宝石ではトリートメントになるなど、複雑で難しい現状もあります。

モザンビーク産ルビー

話は戻って・・・

今回の買い付けで驚いたのはアフリカのモザンビーク産のルビーがたくさん出回っていた事です、ルビーの産地としてアフリカは昔からその可能性が指摘されていましたが、そこまで多くのルビーが市場に出ているとは知りませんでした、ルビーにおいて最高の産地とされているのがミャンマー(旧ビルマ)です、近年オリジンという産地証明書の発行が出来るようになりましたので、その数の少なさから希少で取引する際に産地証明やレーザートモグラフィー検査などの高度な鑑別を必要とするミャンマー産非加熱ルビーですが、これらの検査をしない状態であれば、モザンビーク産のルビーをミャンマー産だと言い張る事が可能なくらいの高品質ルビーを産出していると言う事です。

このアフリカ産、見た目は完全にミャンマー産の高品質ルビーの雰囲気です、が価格は3分の1から5分の1とかなりリーズナブル、モザンビークは宝石の島「マダカスカル」の対岸にあるアフリカの国、地形上もマダカスカルと同一の産状で結晶した高品質ルビーが産出しているのが容易にイメージできます。タイやベトナム、ラオスのルビーがミャンマー産の10分の1と言う事を考えると、ルビーの中ではモザンビークは高額な産地といえます。

ミャンマー産ルビーとモザンビーク産ルビーを同等の品質で比較するとミャンマー産が100万円だとすると・・・モザンビーク産のルビーは20万~40万円と言う事です。同一品質は考えにくいですが、タイやベトナムのルビーは10万円と言う事です!

午前中ルビーとサファイヤのチェックに明け暮れた結果、写真の2石が気に入ってしまった・・・ミャンマー産ルビーやスリランカ産ブルーサファイアを探していたのに全く違う産地のモノになってしまいそう、上の写真はモザンビーク産ルビーとマダカスカル産ブルーサファイア、どちらも天然無処理(ノーヒート&ナチュラル・ナチュラル)

モザンビーク産ルビーの特徴としてシルク周辺に色溜まりがある事と大きなニードル・インクリュージョンそしてバブルと言われるクリスタルインクリュージョンが有る事が特徴のようです、実際に拡大鏡で観察すると、確かにそれらしいものが見えてきました、その後いくつものモザンビーク産ルビーをチェックしていくと何となく、シルク周辺の色溜りや大きなニードル状インクリューションが掴めてきました、ルビーにとって命ともいえる色の印象を決める紫外線反応もミャンマー産ルビーよりはやや弱め、ただこれに関しては決め手となるほどの差はないように思えました。第一印象では相当ルビーに詳しい宝石屋さんなら「ミャンマー産に比べて何か大味な感じがする・・・?」と思う程度のわずかな違和感しか感じないのでは?と思います。

と言う事でモザンビーク産ルビーとミャンマー産ルビーはほとんど見た目が同じ、鑑定鑑別機関発行のオリジン(産地証明)が無ければ産地はミャンマーだ!と言い張っても、なかなか看破できないかもしれません!それでも情報開示してミャンマーとモザンビークの両方を商いしたい処だ。

ピジョンブラッド、ミャンマー産ルビーの最高峰

と言う事で、ミャンマー産の逸品を改めて探す事に、探し始めて5時間検品の速度も落ちてきた夕方に「これは!」と思える逸品に出会いました。鑑定書には産地証明(オリジン)が出ていて、ミャンマーのモゴック鉱山産出の天然無処理のルビーだ、石の目方は1.2ct!サイズも大きくて形もきれい、ちなみにオーバルカットという小判形に研磨する事が多いルビーですが、小判型の黄金律は7×5(※セブン バイ ファイヴと読みます。)!まさに7×5のオーバルカット!

ルビーの色は色々有ります、当然ミャンマー産ルビーにはピジョンブラッドと呼ばれる最高色が有るのですが、これの条件は鑑定機関によってマチマチ、赤色が濃くなりすぎて黒味がさすとマイナス、赤が薄くてピンク味が強くてもマイナス、宝石の全面、全体に強い赤色のファセット・モザイクが広がってキラキラする事が必須条件!ルーペで覗き込んだ際に、激しく赤い色の洪水のような状況であれば「ピジョンブラッド」と呼べる最高峰ルビーとなります。ちなみにピジョンブラッドの範囲内で私のいちばん好きな色は、金色っぽく見える赤!「ゴールデンレッド」、写真のミャンマー産は正にゴールデンレッドカラーのピジョンブラッド!うぉーテンション上がってきたー!さっそくキープしたところで、午後4時、そろそろ、太陽が陰ってきてルビーの色合いが正しく判断できない時間帯に差し掛かるため残念ながら検品終了、明日の朝、再度確認する事に。

ルビーの中でもミャンマー産ルビーは特に紫外線に対する反応が強く、紫外線を照射した際の色反応が「蘚赤色」というヴィヴィットな赤色反応を示します、晴れた日の太陽に下で最も強く輝くのがルビーなのです。逆に考えると、紫外線量の多い赤道直下のタイで検品する場合はこの紫外線蘚赤色反応がどの程度出ているのか?を見極めないと、日本に持って帰ってきた時に検品時に比べてなんとなく色あせたイメージの残念なルビーに成ってしまう事もあるので注意が必要です。ルビーは色と紫外線反応の両方で色グレードを見極めなければなりません。私の場合は「付け石」という基準石を持ち歩いていて、その色と比較して最終判断しています。
一日中ルーペを覗き込んでいると集中しているからなのか、時間があっという間に過ぎてしまう、しかも結構な集中力を要するため、終わった途端、どっと疲れが出て結構ヘトヘトになってしまうんです。

今回の訪タイで感じたことはモザンビーク産のルビーもしかりですが、やはりしっかりと情報開示できる宝石屋でないと、今の世の中、宝石を扱うことは難しいですね。宝石は何を買うか?よりも誰から買うか?大切と言われる所以です。