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2009年ベルギー・アントワープ

2009年ベルギー・アントワープ

更新:2009年05月20日

さて、今回はヨーロッパ編、ダイヤモンド研磨の聖地ベルギーのアントワープ(Antwerpen)へ行ってきました。※なんかWebサイトなんかの表記を見ていると「アントウェルペン」とか「アンベルス」とかっていう呼び名で表現されることが多いみたいですが、ここは呼びなれたアントワープで統一しておきます。宝飾業界ではアントワープで通っています。新潟からアントワープへは、韓国のインチョン(仁川)へ“ハブ”空港として注目の国際空港です。世界中の国際空港へ飛行機が飛んでいるインチョン(仁川)ではトランジット時間のが4時間程度あればソウル市、明洞(ミョンドン)の町まで足伸ばして韓国料理を堪能するのも一つの楽しみ方です。今回は南大門市場のお店に飛び込みで韓国料理!しっかり腹ごしらえして、一路フランスのパリParisへ、11時間30分のロングフライト!一回寝てまた起きて、また寝て起きるとようやく到着します。(笑)

パリからは陸路電車でベルギーを目指します パリからは陸路電車でベルギーを目指します。

パリからベルギーの首都「ブリュッセル」(ブラッセル?これも発音は様々)までは特急が有るんですが、それでもたっぷり3時間の道のり・・・たまたま夕方だったので車窓を眺める事が出来たので、まぁまぁ退屈せずにブリュッセルに到着、この先は鈍行で約1時間先にある「アントワープ」を目指します。

結局深夜11時(23時)にアントワープへ到着、成田を出て・・・待ち時間を入れると約20時間!時差ボケというよりも旅疲れの状態でアントワープの町中に、ホテルは駅から10分くらい歩いたところにあるハイリットホテル(HYLLIT HOTEL)へチェックイン、明日に備えて寝ることに。

Antwerpen(アントワープ)はベルギー北部に位置しています

Antwerpen(アントワープ)はベルギー北部に位置しています。ベルギーと言えば・・・「フランダースの犬」と「ワッフルとチョコレート」それに「王様の国」…そんなイメージでしょうか?実はダイヤモンドの国でもあります!

王立芸術アカデミー

アントワープ王立芸術アカデミー(王立芸術学院)は世界の三大ファッション専門大学としても有名、そのためかアントワープの街の中にはそうした最先端のファッションがあふれていることでも有名。

駆け出しのデザイナーがお店を出していたり、王立芸術アカデミーの出身者がお店を構えているケースも多く、ファッション業界からも注目を集めている。アントワープの6人(The Antwerp Six)なんかも有名ですよね。

ロンドン・パリ・アムステルダム・フランクフルト等の主要都市から見ると、ほぼ同じような距離間に位置する交易の中心都市で、港の輸出入の取扱額もヨーロッパ第2位の大きな港を持つ交易都市でもある。

ダイヤモンド研磨の聖地ベルギー・アントワープ


DelRey公式HP(日本版):www.delery.co.jp
GODIVA公式HP(日本版):www.godiva.co.jp

大航海時代からはダイヤモンド研磨の町として栄える、現在もダイヤモンド研磨に欠かせない機械の一つで、研磨用円盤スカイフ(Scaif)を開発したことから、ダイヤモンドの研磨においては欠かせない街でもある。世界的なダイヤモンドカッターを何人も世に送りだしている、現在世界最高のダイヤモンド・マスター・カッターといわれる「ガビSトルコフスキー」や「ラザール・キャプラン(すでに亡くなっている)」これにオランダの「アイザック・ジョセフ・アッシャー(この方もすでに亡くなっている)」が世界三大ダイヤモンドカッターと呼ばれている、このうち二人の出身地がベルギーと言う事。最近はデルレイ(Delrey)やゴディバ(GODIVA)といった高級チョコレートの会社が有名です、上左の写真)アントワープAntwerp駅の駅舎、歴史を感じる石造りの建物を近代的な建物で覆っています、上中の写真) アントワープの定宿ホテルのちょうど正面にDelRey本店が有る、ショウウインドウの中にはおいしそうなショコラケーキが並んでました。

アントワープのダイヤモンド取引所

ダイヤモンド取引所

左の写真はダイヤモンド取引所のある区画の写真です。このあたりに来るとユダヤ人やインド人などダイヤモンド業界の人たちが多くなってきます。アントワープのダイヤモンド取引所付近にはダイヤモンド取引の事務所が沢山集合しています。

この様な所謂ダイヤモンド街が有るのは世界中でこのアントワープだけ!しかもアントワープのダイヤモンド街は開かれたマーケットとしても有名で、宗教的な縛りや人種による格差もないことから、すべてのダイヤモンドビジネスにかかわる人に対して開かれていて、どんな人種の人でもオールカマーなのです。(写真中)今回目的のサイトホルダーが事務所を構えるビルのエントランスです、このビルの中は全てダイヤモンドの研磨業者の事務所が入っています。ビルの入り口にパスポートコントロールが有り入場時に身分証明用のパスポートで入館者数を管理されます。BROOCHでは現社長が20代のころから通ってダイヤモンドの仕入れを行ってきました。

現在もエンゲージメント用ダイヤモンドの研磨地としてアントワープは有名で、ダイヤモンド取引の街としてもイスラエルやインドと並ぶ3大集散地として有名、BROOCHではベルギー研磨のダイヤモンドをブライダル用のメインダイヤモンドとして仕入れしています。

(写真上)5ctUPのダイヤモンド、マーキースやオーバルなどのクラシックカットダイヤモンドです、なんとすべてDカラー・FL(フローレス)&IF(インターナリーフローレス)の超高品質ダイヤモンドばかり!!実際に手にとる社長、金属の指輪をはずして素手で触る、フローレス(FL)やインターナリーフローレス(IF)のダイヤモンドはピンセットで触っただけでも、その評価がVVS1に落ちてしまう事も、ダイヤモンドの集散地マーケットでは常識なんですが、意外と知られていない事かもしれませんね。

世界中のダイヤモンド原石が

アントワープのダイヤモンド取引所には世界中のダイヤモンド原石が集まってきます。現在もダイヤモンドの集散地としてインド・ムンバイやイスラエルのテルアビブなどが有名です、最近は中国やタイのバンコクなどもダイヤモンド取引が盛んですが、なんといっても歴史と格式に勝りイメージの良いダイヤモンドの集散地と言えばここベルギー・アントワープではないでしょうか?という事で検品用のパーセルを開けると山の様なダイヤモンドが!この袋一つで約300ct位あります!!仮に1ct当たりの金額が10万円だったとしても3,000万円!!!写真に写っているだけで・・・物凄い金額です。

ダイヤモンドカッターの作業場を直撃取材!

ダイヤモンドカッターの作業場

アントワープ市街車で走ること15分、閑静な住宅街の一角へ、人口40万人と言えば新潟市位の規模なので15分も車で走れば結構なベットタウンへ突入します。町の喧騒を離れるとヨーロッパらしくベルギーではどこも伝統的な田舎の原風景が広がります。

普通の住宅街的な場所で車が停止・・・こんな所が工場なの?というような住宅地の中である、今回尋ねるのはエクセレントメイクされたラウンドブリリアントカットの中でもハート&キューピットだけを仕上げるダイヤモンドカット職人の工房です、人目につかない住宅街の中でコツコツ仕上げているようです。

いよいよ熟練のダイヤモンド・カッターとご対面、周りの住宅の景色と対照的な少し厳重な建物(撮影禁止だったのが残念!!)閑静な住宅街の中のコントラストは何やら秘密基地といった感じでテンションも一気に高まってきました。

ここにはラウンドブリリアントカットのトリプルエクセレントだけを専門に研磨する世界屈指のダイヤモンドカッターが作業場を持っています。

世界屈指のダイヤモンドカッター

(写真上左)研磨後のトリプルエクセレント&ハートアンドキューピットの写真、完全な対称性を手作業で生み出していく!!気の遠くなるような作業だ、(写真上右)アントワープで開発されたダイヤモンド研磨用の回転盤「スカイフ(Scaif)」これがなくてはダイヤモンドは今のような輝きを引き出すことはできなかった。

彼らがBROOCHのエンゲージリング用のダイヤモンドを研磨している職人です。
ダイヤモンド研磨は基礎的な部分を原産国で済ませて輸出されて来ています。

特にラウンドブリリアントカットに関してはトリプルエクセレントまであと少し、のほぼほぼ仕上がった感じで出荷されて来るそうです、最終的な仕上げ研磨を残すのみの処までの研磨が完了した状態でベルギーへ送られてきます。

ちなみにダイヤモンドの原産国では最終仕上げのデリケートな部分はまだまだ技術不足で、この部分の技術力については今の処、人の手で仕上げないとならない部分なんだとか、特に日本向けの0.5ct以下のサイズに関しては特殊な技術が必要なんだとか、その話を聞いたときは新潟の燕三条エリアのステンレスなどの金物磨きの職人たちの事をNHKで取り上げていたTVプログラムを思い出しました、そのTVでも研磨の最後の最後の段階では、コンピュータ上では読み取りできない感覚的な磨きの世界が有る、というような内容だったと思います。

ダイヤモンドの研磨の世界でもそういったことが有ると言う事ですね、実際ダイヤモンドは人の夢を詰め込んだり、楽しかった記憶や、頑張ったり大変だったりした思い出をその輝きに閉じ込める宝石、夢の部分は絶対的に大事な条件と言えます。

そんな宝石の研磨が、今や全てオートマチックにできてしまいました!では、夢とは言えないですよね?なんか、どこか工業製品のようなモノになってしまったら悲しいです。

もともとダイヤモンドはルビーやサファイヤと違って「輝きを楽しむ宝石」であると言うところが、CUTグレードの重要性を大きなものにしてるのですが、このCUTグレードに関しては何を持って最高なのか?が明確にわかっている以上、こうなることは解ってはいたんですが、現実のモノとなると何となく複雑な気持でもあります。

ダイヤモンドの研磨方法

話は戻りましてダイヤモンドの研磨は研磨用の機械にダイヤモンドルースをセットしてた研磨盤、スカイフ(Scaif)に押し当てて擦って磨きます、磨く際にはフラックス剤に混ぜたダイヤモンドのパウダーを研磨粉代わりにします。ダイヤモンドの硬さの異方性を利用して粉状のダイヤモンドの粒子のサイズ番手まで、表面を磨きこむ事が出来ます、硬いという事はそれだけ一つ一つの粒子は細かいという事、最終的には職人の指先に伝わってくるダイヤモンドと研磨盤の接地面の具合を熟練のカンで見分けていきます。

研磨の際には研磨盤とダイヤモンドの摩擦熱はダイヤモンドに焦げの後「バーンマーク」を付けるほどの高温になる事も有るそうです。

ラウンドカット・ブリリアントは全58面に磨き込んで行きますので、一面一面仕上げていくとしても最低58回もこの作業を繰り返して行くというかなり根気の必要な作業です、僕も宝石ビジネスに携わる者として様々な宝石の職種を見てきましたが、このダイヤモンドカッターだけは、ちょっと躊躇うほどの集中力と繰り返しの作業が超高精度で求められるので、遠慮しておきたい仕事だ!精神的、技術的、にあまりやりたくないな~と思う職種です(笑)

研磨の最終段階では完全な対称性(symmetry)と表面研磨(Polish)を目指します。ダイヤモンドに限らず宝石表面の光沢と宝石の形の美しさを決める対称性は共にとても大切な要素と言えます。ちなみにダイヤモンドのグレート中CUTはラウンドブリリアントカットにだけ与えられる評価ですが、その他の形に研磨したダイヤモンドはカットグレードに対称性(symmetry)と表面研磨(Polish)は表記されます。

ラウンド・ブリリアント・カット・ダイヤモンド

研磨したラウンド・ブリリアント・カット・ダイヤモンド、研磨盤を手入れする際に使う材料は工業用ダイヤモンド、研磨の練習にも使うこのダイヤモンドを実際に磨かせてもらう事に!左手でダイヤモンドを固定するトングを持ち・・・トングと言ってもピンセットの意味ではなくダイヤモンドを固定する結構ごっつい工具だ、先端にダイヤモンドをセッティングするとスカイフ(Scaif)の研磨面に平行になり簡単に固定できるように持ち手の後ろ側が二股の三脚みたいになっている、スカイフ(Scaif)の盤面にダイヤモンドをくっつけると、後ろの二股脚が自動的に研磨面に平行になるように設計されている、右手でフラックス剤(おそらくはオイル状だったので油のたぐいだと思います)を研磨盤にダイヤモンド研磨用のダイヤモンドパウダーを混ぜ込んで少しづつ塗っていく、この時スカイフ(Scaif)は高速回転しているので右手は力を抜いて少し触る程度だ、自分の右手も一緒に磨かれるのでは?と心配になりますが、不思議と何でもないんですね。

トングを持っている左手を前後にスライドさせるように動かしながらダイヤモンドを研磨して行きます、ダイヤモンドを研磨すると・・・以外にもガンガン削れている感覚ではなく、『ぬるぅー』っと滑るような感覚が左手の手先に伝わってくる、パウダー状のダイヤモンドと研磨する大きな結晶のダイヤモンド、地上最高のモース硬度を誇る者同士がこすれ合って生まれる何とも言えない不思議な感覚、この作業でダイヤモンドのファセット一つを完全なポリッシュ(Polish)に仕上げていきます、同時に対称性(symmetry)も意識しながら!なんとこれを58回繰り返せばダイヤモンド一つの最終研磨が完了!何とも気の遠くなるような作業でした。

(上写真右)研磨した面だけが光っているのが見える。職人は自分の工具は自分が一番使いやすいように手入れしていく、スカイフ(Scaif)の盤面も鋼で出来ているとは言っても消耗する工具に変わりはないので、日々の手入れが繊細な手先の感覚を磨くのにも重要なんだとか。

(写真上右)高速回転する研磨盤スカイフにダイヤモンドを押し当てると、研磨の摩擦熱でダイヤモンドが真っ赤になっているのが見えるでしょうか?ダイヤモンドの燃焼温度は約800度と宝石の中では比較的低温なのでこうした研磨熱で出来てしまう割れや焦げも最終的には見逃せない欠陥部分になる恐れがあります。

ちなみに写真のダイヤモンドのように赤くなるまで研磨熱がたまると・・・研磨面とは反対のダイヤモンドのファセット部分に逃げようとした熱が焦げのような状態で残るバーンマークが残るそうです、これが出来るうちは一人前とは言えないんだとか。とにかく気の遠くなるような作業をコツコツ積み重ねて一つのダイヤモンドが完成します、様々な人の手を経て研磨地までやってきたダイヤモンドはここで初めて宝石となる、そして最後の段階は本当にデリケートな作業で仕上げていました、これからいよいよ流通のルートに乗っていくわけです。ダイヤモンドの旅はまだまだ続くのでした。